このコーナーは、「はむらぼ」がお勧めするCDをテーマ化してお送りするシリーズ。お題は、演奏者や作曲家、楽器などなどさまざま。なんでもありありのコーナーですが、一聴しても損はないはず(!!?)
私は吉松さんが好きだ! [New!]
吉松隆さんって、このページを見られる方なら、ほとんどご紹介の必要はありませんよね?(笑) 1953年生まれ、慶応工学部を中退し、ほとんど独学で作曲を習ったようです。で、レコ芸や各種ライナーノーツなどにも味のある文章を書かれるなど、今や日本の中堅作曲家としては、独自の世界を作っていると思います。トレードマークはベレー帽ですね(笑)。
さて、当方が吉松さんの音楽と出会ったのが、84年のギター協奏曲「天馬効果」。当時はレコードだったんですけど、神保町の古本屋街でたまたまジャケットをみまして、えらく気に入ってしまったんですよ(馬頭星雲のジャケットです)。で、さっそく家に帰って聴いたんですけど、これがまた大ショックを受けまして、B面の野田輝行さんのギター協奏曲を聴かないまま、その日のうちに3度も繰り返して聴いてしまいました。当方がクラシックギターを始めたばかりだった、ってのもあるんですけど(笑)、こんなにも興奮した経験は、後にも先にもこの一度だけですね(大喜)。山下和仁の超絶ギターもさることながら、「なにしろ音楽というものがあまりにも素晴らしいもので、せっかく生きているのだからせめて美しい音楽のひとつも書いてからのたれ死ぬのも悪くない」って泣かせるセリフを吐いて作曲家宣言した、吉松さんならではの音楽がそこにありました。
そんな強烈な出会いから、吉松さんの新譜が出るたびにゲットしたんですけど、カメラータから出た作品集1(2枚組)は良かったですねえ。デビュー作「朱鷺によせる哀歌」「デジタルバード組曲」「ランダムバード変奏曲」など、鳥シリーズを実感したのもこの頃。複雑なスコアを見ながら、音符が多いのに、どうしてこんなにも透明な音楽なんだろう?って不思議に思いました。で、もうこの頃には、完全に吉松節がインプットされまして(笑)、「一角獣回路(ファゴット協奏曲)」「サイバーバード協奏曲(サクソフォン協奏曲)」「オリオン・マシーン(トロンボーン協奏曲)」などのほか、「ギターソナタ」「サクソフォンソナタ」なんかを聴くたびに、「ああ、これこれ! このサウンドこそが吉松さんの曲なんだよね」って、うれしくなったものです。
小品集にも絶品がありまして、ピアノ曲集「プレイアデス舞曲集」やギター曲「優しき玩具」などは、ランダムセレクトにしてBGMにすると、なんとも心安らぐ世界(大喜)。吉松さんの世界にどーんとのめり込んでしまうのです。もっとも、好みは別れるかもしれませんね。これはクラシック音楽ではない、ってご意見ももっともだと思いますし(笑)、ワンパターンといってしまえば、それはそうだ(苦笑)。でも、ビバルディだってバッハだって、モーツァルトだって、一回聴けばそれってわかるじゃないですか。ということでやはり私にとっては、吉松さん、偉大なりです。
で、ぢつはこの吉松さん、マンドリン曲も書いているのです。92年の第18回JMJコンサートで、国分誠先生の指揮で「虹色機関T」という大変透明感ある小品を書いていただいています。当方もこの演奏会に参加したんですけど、本当は出る予定なかったんですよ。でも、吉松さんの新曲やるっていうんで、その場で心変わり(笑)。この曲、コンチェルトグロッソというか、2つのオケというか、「モビールパート」と「レインボーパート」に分かれて、異なる性格が与えられています。緊張感を持続させるのが大変ですけど、それだけに大変美しい曲です。
ご紹介した作品すべて聴いて欲しいのが本心なんですけど(笑)、ここでははやり「鳥たちの時代」「優しき玩具」「天馬効果」を押しておきましょうか。そういえば、若手指揮者の藤岡幸夫さんが、吉松さんのことをえらく気にいったらしくて、今後の新作はすべて藤岡さん指揮、英国CHANDOSレーベルからの録音が決まっているようです。最近では「ピアノ協奏曲」などを発表しており、はやくCDとして登場することを首を長くしてまっておりますです(喜)。
- 吉松隆作品集1「鳥たちの時代」/カメラータ・トウキョウ 30CM−178〜9
- 吉松隆作品集2「オリオン・マシーン」/カメラータ・トウキョウ 30CM−354
- ギター協奏曲「天馬効果」/RCA BVCC−2524
- ギター協奏曲「天馬効果」、他/CHANDOS CHAN9438
- ギター作品集「風色ベクトル」/RCA BVCC−673
- ギター作品集「優しき玩具」/現代ギター GGBD2002
- ファジィバード ソナタ/BANDAI APCE−5552
- サクソフォン協奏曲「サイバーバード協奏曲」/EMI TOCE−9152
- プレイアデス舞曲集/DENON COCO−80115
お約束のピアソラ
96年のクラシック音楽界は、もうピアソラ一色に染まってしまいましたね。ご存知ない方のために、ちょっとばかりご紹介しますけど、アストル・ピアソラ(1921−1992)は、アルゼンチンのバンドネオン奏者(アコーディオンみたいなやつですね、でも形自体は結構小さいです)兼作曲家です。で、アルゼンチンの民族音楽(?)のタンゴの革命児として有名ですね。みなさん、タンゴは良くご存知でしょうけど、ラ・クンパルシータのような2拍子のコンチネンタルタンゴではなくって、もう少しフリーなリズムを持っています。
この一大ブームの火付け役となったのが、ヴァイオリニストのギドン・クレーメル。アルバム「ピアソラへのオマージュ」がリリースされて大ヒットとなりました。当方、このCD、輸入盤で購入したんですけど、当初はあまりピアソラのことを良く知りませんで、ジャケットがダンスをしている女性の足を大きく映し出した、まったくもってクラシック音楽向けとはいえないようなおしゃれなものだったんで、迷わずゲット(笑)。で、クレーメルのヴァイオリンなら大外れはないだろう程度に、あまり大きな期待をしないでいたのですが、ところがどっこい、その日のうちにピアソラの魅力に完全に取り付かれてしまったのです。
もっとも、その前だったと思うんですけど、一応、ピアソラのギターとフルートの名曲「タンゴの歴史」を生で聴いたことがありまして、タンゴってなかなか楽しいかもしれないって思ってたことも事実(笑)。で、そのころはまったくもってCDなど出ていなかったんで、すっかり忘れてたんですよ。ということで、クレーメルのCDが出てからは、次から次へとそりゃ、猫も杓子もピアソラ様々ってんで、たくさんの新譜が出たのでした。
さて、ピアソラの魅力っていったいなんでしょうね? きっと人の心の一番深いところを揺さぶる魔力を持っているんだと思います。はっきりいってワンパターンなんですけど(笑)、でもみなさん、やはり水戸黄門みると楽しいでしょ(笑)? 当方なんか、年末の忠臣蔵ではわかっていても涙ポロポロしてしまうんですけど(笑)、それとまったく同じじゃないかな? 感情のなすがままになってしまう、そんな音楽なんですね。クラシック音楽っていうと、どうしても理性が働くじゃないですか? あるいはジャズとかは、ものすごくテクニックって側面が強調される(これは言い過ぎかな?)。でも、ピアソラの音楽って、そういうこと超越してしまって、いつのまにか感情移入が出来ちゃうんですよね。
ということで、このCDとの出会いがあまりにも強烈だったので、ずいぶんと多くの友人に同じものを買わせてしまいました(笑)。「一人部屋にたたずんで、ブランデーグラス片手に、ちょっとアダルトな世界に浸りたいときにどうぞ」って殺し文句で(笑)。ま、今でこそピアソラをたくさん聴いたんで、クレーメルの演奏も結構、客観的に聴けるようになったんですけど、それでもやはりこのCDに戻ってくることもしばしばですね。
ということで、数あるピアソラのCDの中では、当方、このクレーメルの「ピアソラへのオマージュ1」と、もひとつタンゴオペラ(小オペラですけど、ほとんどオペラというよりも小さな酒場での語り劇って感じ)「ブエノスアイレスのマリア」がお勧め。もっともこれらは一人の部屋用@ブランデー付き、ですんで(笑)、車の中やBGM的に聴く場合は、ピアノデュオの「ロス・タンゲーロス」あたりが良いかしら。ピアソラの神髄を知りたい場合は、はやり本人がバンドネオンを演奏しているものが良いと思いますです。
- 「ピアソラへのオマージュ1」/ギドン・クレーメル(vl)他/NONESUCH 7559−79407−2(輸入盤/国内盤もあります)
- 「ピアソラへのオマージュ2」/ギドン・クレーメル(vl)他/NONESUCH WPCS−5080(こちらは国内盤)
- 「ブエノスアイレスのマリア」/(ポルトガル語なんで、詳細は良くわからん!)DISKMEDI BLAU DM156CD(輸入盤)
- 「ロス・タンゲーロス」/エマニュエル・アックス、パブロ・シーグレル(pf)/SONY RECORDS SRCS8237(国内盤)
- 「タンゴの歴史」Iwahara(fl)、Koga(Gt)/ARS MUSICI AM1081−2(輸入盤/これは国内盤も出てたはず)
指揮者ヘレヴェッヘを聴け!
実は当方、フィリップ・ヘレヴェッヘ(Philippe Herreweghe)という指揮者のCDを4枚持っているんですけど、すべて輸入版なんで、ご本人やオケのことは良く知らないんですよ(苦笑)。でも、アーノンクールやガーディナーに次ぐ古楽器オケの指揮者といえば、少しはわかりますか? シャンゼリゼ管弦楽団(Orchestre des Champs Elysees/なんだか良く分からないけど...調べておきます/苦笑)という古楽器オケを率いて、もう何枚もCDを出していますね。
当方が古楽器オケを聴くようになってから、どれくらいになるのでしょうかね。もう3〜4年になりますか。当時は、ガーディナーのベートーベンとか聴いて衝撃を受けた方なんですけど、ヘレヴェッヘのシューマンを聴いて、かなり虜になったかもしれないです。古楽器オケは、その素朴なサウンドと透明感が特徴的。金管には洗練さがないんですけど、木管楽器、とくにオーボエなんかは結構いい味を出します。で、現在、シューマンは、交響曲の2番と4番、ピアノ協奏曲とチェロ協奏曲が出ています。シューマンのオーケストレーションっていろいろといわれているじゃないですか。で、古楽器ならばどうか、って聴いてみたんですけど、これが予想以上に良かったんですよ。重くなりすぎず、透き通ったサウンドで、木管、金管、弦のバランスが良かったんです。それでヘレヴェッヘを聴くようになったかな。チェリビダッケやバーンスタインのシューマンもいいんですけど、飾りっ気なしのそのままのシューマンを聴かせてくれます。
この他には、モーツァルトのレクイエム、メンデルスゾーンの真夏の夜の夢、を持っています。モーツァルトでは、グラン・パルティータのCDが各方面で絶賛されていますが、まだ当方、未入手。いずれ、このコーナーでご紹介できるでしょう。通常のオケは最近どうも...というみなさん、ヘレヴェッヘ指揮の古楽器はいかがでしょうか?
- シューマン「ピアノ協奏曲」「交響曲第2番」/Andreas Staier(pf)/harmonia mundi HMC901555
- シューマン「チェロ協奏曲」「交響曲第4番」/Christophe Coin(vc)/harmonia mundi HMC901598
- メンデルスゾーン「真夏の夜の夢 全曲版」「フィンガルの洞窟序曲」/harmonia mundi HMC901502
- モーツァルト「レクイエム ジェスマイヤー版」/harmonia mundi HMC901620